山で遭難した話
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その時はサークルメンバーが全員用事か体調を崩すかで集まらなかったので、一人で登山を試みることにしました。
一人での登山は初めてでした。
比較的に難易度の低い山道だったのと、目的地への到着が昼過ぎになることから余裕を感じ、あちこち寄り道をしながら山の風景と空気を満喫していました。
元から歩くのは好きで、散歩のような気分で挑んでいたのが間違いだったのかもしれません、寄り道を繰り返した結果、本来の予定コースを大きく外れ、道すらなくなっていました。
いわゆる遭難というやつです。
目的地での宿泊を予定していたので、テントはおろか、寝袋など寝具になるものは一切持ってきていませんでした。
あるのはある程度の食料と着替え、簡単なキャンプ道具のみでした。
コンパスは持っていましたが、もはやここがどこだか分からないので、方角が分かっただけではどうしようもありませんでした。
歩き疲れた頃、日が傾いて辺りがかなり暗くなっていました。
危険な動物の目撃例のない場所でしたが、夜はどうなるか分からなかったので不安でいっぱいでした。
人も通るわけもなく、電波も通じないので携帯電話も意味を成しません。
万事休すというやつで、死を覚悟しました。
すると目の前にうっすらと人影が見えました。
藁にもすがる思いで助けを求めましたが、その人影はこちらに気づいていないのか、どんどん遠ざかっていきます。
このままでは最後の希望を逃してしまうと考えた私は、必死になってその人影を追いました。
残り少ない体力で必死に追いかけましたが、結局その人影を見失ってしまいました。
絶望の淵に立たされた私でしたが、仄かな月明かりに照らされる建物を発見しました。
さっきの人影はここの関係者かな、と思いながら近づいてみると、どうやら廃屋のようです。
廃屋と言っても屋根や壁に破損があるわけでもなく、家屋としての機能は残したままでした。
しかし、明かりひとつ無いのと、施錠されていない扉から中に入っても家具の類が何もなかったことで、ここには誰も住んでいないことを確信しました。
とりあず、寒さを凌ぐために今夜はここで眠ることにしました。
寝具はありませんでしたが、暖炉があったので使わせてもらいました。
翌朝には体力も戻り、歩き続けてようやく目的地に到着しました。
もしあの廃屋にたどり着かなかったらと思うと、今でも冷や汗をかきます。
結局、あの人影が誰だったのかは分かりません。
あるいは、幽霊の類だったのかもしれませんが。
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