その日は一人で沢登りを楽しんでいました。
川のせせらぎを聴きながらの沢登りはなかなか風情があります。
途中で釣り糸を垂らしたりもしましたが、特に何も釣れないので諦めて歩を進めました。
その途中、川の水に妙な異変を感じた私は、一旦近くにあった小高い丘を目指しました。
その場所なら周囲をある程度見わたすことができると考えたからです。
そしてそこで休憩がてら周囲を見渡していると、先程まで私が居た場所を大量の水が襲っているのを目撃しました。
いわゆる「鉄砲水」というやつですね。
間一髪のところで難を逃れた私でしたが、ここ最近で雨が降ったという話は聞いていなかったので、なぜあれほどの川の水が流れてきたのかを理解できていませんでした。
ともかく周囲を確認して特に被害にあった人も見当たらなかったので、私はそのまま丘を下って元のコースに戻りました。
周囲が水浸しである以外は、先程までと何ら変わらない景色に、逆に違和感を感じるほどでした。
その後は何事もなく無事に予定を終了し、早めに麓のキャンプ場まで戻ってこれました。
時間に余裕があったので、暇つぶしも兼ねてキャンプ場の管理人さんに件の鉄砲水について聞いてみました。
管理人さんの話では、
「大雨でなくても鉄砲水は起こり得る。上流に土砂や木の枝などが集まって堤防を築いてしまい、それがせき止めていた川の水に耐えられなくなると決壊して一気に水が流れてしまう。」
という話です。
前兆として、川の水が濁ったり、木の枝などのゴミが流れてくるといった現象が起こるのだそうですが、私の時は特にそういった兆候は見られず、ただ何となく嫌な気配がしたので避難しただけでした。
もし、釣りに夢中になっていたら私も鉄砲水に巻き込まれていたかもしれません。
そのせいで、それ以降鉄砲水が怖くなり、沢登りはしていません。
流れの緩やかなあたりで釣りを楽しむことはあるのですけどね。
沢登りのように、一人で登山を楽しむ場合だと危機管理も難しくなるので、一人ではあまり近づけませんね。