キャンプ場の満天の星空
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昔、まだ私が主学生だった頃だったと思います。
家族でキャンプに行こうという話になりましたが、母と弟は都合が悪く、私と父だけで向かうことになりました。
そのキャンプ地は荒れ果てた広場になっていて、近所には町や村はおろか、何かを売っている場所も一つもありませんでした。
そんな立地条件だったため、連休でありながらもキャンプをしているのは私たちだけでした。
「貸切だな、やったな」と父は言いましたが、こんな荒れた不便なキャンプ場を貸切にしたところで嬉しくもなんともなかったのを覚えています。
とは言え、近くを流れる川の水は冷たく、日中はそれなりに暑かったため水遊びを楽しむことができました。
川底は砂になっていて、裸足で遊んでも怪我をする心配もなく、砂の感触を楽しむことができました。
少し離れた場所では父が魚釣りをしています。
もし釣れなかったら、食事は野菜だけになってしまいます。
なんとか二人分の魚は確保できたようです。
夕暮れ時になり、釣った魚と持ってきた野菜でバーベキューを満喫しました。
少し味気ない魚でしたが、これはこれで満足することができました。
満腹になり、もう寝ようかと思っていましたが、父に「まだ寝るには早い」と言って止められました。
焚き火を前にして父は怪談を語り始めました。
私を眠らせないためです。
恐怖におののく私は無論そのまま眠れる訳もなく、父の話に耳を傾けていました。傾けたくはなかったんですけどね。
ある程度話し終えると、父は焚き火から少し離れた高台まで私を連れて行きました。
「すごい物を見せてやる」と言って、それが何かは話してくれませんでした。
どの道、怪談のせいで眠れなかった私は、そのまま父について行きました。
辺りが暗かったのですが、懐中電灯片手になんとか転ばずに高台までやって来れました。
足元には、昼間遊んだ川が流れています。
おもむろに父は私の懐中電灯を奪い、明かりを消してしまいました。
暗いのが苦手だった私は抗議しますが、「空を見上げてみろ」と言われ、文句を言いながら顔を真上に向けました。
そこには見たこともないほどたくさんの星たちが輝いていました。
数も、個々の輝きも、普段見る夜空の星たちとは比べ物になりません。
先程までの恐怖や不満はどこかに行ってしまいました。
父は、これを見せるためにわざわざこんな辺鄙なところまで私を連れてきたのです。
アウトドアサークルに入り、それなりにキャンプを経験した私ですが、今でもあの日に勝る星空を見たことがありません。
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