私のキャンプでの役割は、魚釣りによる食材確保です。
釣り歴自体はそこまで長くはありませんでしたが、きちんと人数分の魚を釣り上げるので、メンバーからも信頼を置かれていました。
「あいつが釣れなきゃ、誰にも釣れない」「魚がいなかったんだろ」と言われるくらいに釣りスキルの高さは自負していました。
その日のキャンプでも、釣りで食料を確保すべく川にやってきました。
思ったよりは釣れませんでしたが、人数分にはなんとか足りる量を釣り上げ、調理担当のところへ持って行きました。
ところが、お酒が進んでいたためか、予想以上に食べるペースが早く、釣り上げた魚も持ってきていた野菜も全て平らげてしまいました。
まだお酒は残っていたので、おつまみが欲しくなるところ、まだ日も沈んでいなかったこともあって追加で魚を確保するように指示された私は、お酒を片手に追加の魚を釣り上げるべくもう一度川に向かいました。
私も、もう少し食べたいと思っていたので、文句を言わずに川まで歩いて行きました。
ある程度釣り上げたところで、次の一匹で終わりにしようと考えていたところ、その最後の一匹がかかりました。
しかし、今までの魚とは異なり、強い引きに竿を持って行かれそうになりました。
持っていたお酒を足元に置き、魚との格闘を開始しました。
その強い引きに、私も負けじと力を込めて竿を引きます。
引いては引かれ、引かれては引きを繰り返し、かなりの時間を費やした結果、釣り糸とルアーを持って行かれて私の敗北に終わりました。
釣り糸は、私たちの戦いに付き合っていられなかったようです。
すっかり日も沈んでしまい、もう一度魚の姿を拝む間もなく戦いは終結してしまいました。
帰りが遅いことを心配して様子を見に来たメンバーに魚を預け、しばらくはそのまま立ち尽くしていました。
「逃がした魚は大きい」と言いますが、あの引きの強さはそれほどの大きさだったのだろうと、残ったお酒を飲みながらしばしの間、逃がした魚に思いを馳せていました。